私的雌雄判別法

 マラウィ湖産シクリッドを飼育する上で雌雄の判別はかなり大きなポイントを占めると思います。発色済みの成魚を購入される場合は問題ありませんが、わたしのように「幼魚から育てて成魚になる過程を楽しむ」タイプの飼育者にとっては、個体選びにおける最大の関心事といっても過言ではないでしょう。
 ここでは、これまでの経験からたどり着いた私なりの雌雄判別方法について紹介します。あくまでも経験則であり、限られた種類・個体数での記述ですので、はずれの時はご容赦ください。雌がいた方が雄の発色も進むでしょうし、雌でも鑑賞に堪えるものはありますから・・・。

1.一般論的雌雄判別法
1 体格・行動で判断する。
 マラウィ湖産シクリッドの場合、雄の方が雌より大きくなります。したがって行動も積極的かつ排他的です。そこで、幼魚が複数泳いでいるような売り場水槽ではよく観察して次のような点に注目するとよいでしょう。
@大きい個体 A物怖じせず、手をかざすと水槽前面に寄ってくる個体 B他魚を追い払うほど元気のよい個体 C幼魚斑を消している個体
 店員さんがマラウィ湖産シクリッドによほど強い店ならば相談してみるのもよいと思いますが、一般のショップでは店員さんにも区別がつかないことが往々にしてあります。
 エッグスポットが見えているだけでは残念ながら確定ではありません。うちのアウロの稚魚は全員エッグスポットが見えています・・・。成魚の完全発色時の色彩を確認し、「顔だけ青くなる」「体側は黄色くなる」などをイメージするとより確率が上がることと思います。 
2 見えないものを見る。
 なお、裏技として次のような方法もありますが、あくまでも裏技でして私自身も試行錯誤中です。
@カメラのフラッシュによって、肉眼では見えないエッグスポットを映し出すことができる場合があります。店内でのフラッシュ撮影は必ず許可を得てからにします。
A背びれや尻びれは真横から見るときと斜めから見るときとで微妙に光り方が違います。上に紹介したような行動面での特徴と併せて参考になる場合があります。
3 確定条件を熟知する。
 幼魚と成魚の違いは発色と体型にあります。雄は主に青い発色をし、それに伴って背びれ尻びれが伸長します。幼魚と雌は丸いままです。頭部の一部でも青かったりひれがとがっていたりしたら、かなりの確率で雄だと思われます。エッグスポットが出るか出ないかも知っておくとよいでしょう。

 以上のようなことから、アフリカンシクリッドの雌雄を判別するには次の点に着目するとよいと思われます。期待度を海物語のリーチアクションで例えてみました。パチンコファンのみなさんにはよく分かるはず!!
・エッグスポットが見える→サンゴ(期待できる)
・唇、えら蓋などに青い発色が見える→黒潮(期待度アップ)
・背びれ・尻びれがとがっている→魚群(激熱!)
2.種類別雌雄判別法
(1)雄確定のケース
@ブッコクロミス・ローデシーの場合
 これは購入から2ヶ月たった頃に撮影したものです。サイズは6p。ご覧のようにまだエッグスポットは出ておらず、明確な性徴はありません。もちろん購入した時点も同じです。
 ただ、えら蓋の上の一カ所だけ、常に青みがかっている部分がありましたので、購入に踏み切りました。
 上の写真から4ヶ月経過し、エッグスポットが現れ始めました。本格的な発色にはほど遠いのですが、ほぼ雄確定だと思います。
 サイズは8pを少し超えたところです。
 さらに4ヶ月経過し、サイズは12pとなりました。
 新たに雄らしい傾向が現れたのは唇の部分の青と、えら蓋後方の鱗片のオレンジ色です。雄の成魚は顔が青く、体側はオレンジになるので期待が膨らみます。
 今後は背びれと尻びれの先端がとがってくるのを待ちたいところです。
 さらに3ヶ月経過してサイズは15pに迫りました。
 背びれが伸長してオレンジが濃くなり、エッグスポットも非常に明瞭になりました。非常に順調にサイズアップしておりますので、本格的な発色が始まるのは20pを超えてからになるようです。
Aニンボクロミス・ヴェヌスタスの場合
 おなじみのヴェヌスタスです。3pぐらいの幼魚サイズが格安価格で売られていますが、この魚は大きくなってもエッグが出ません。
 雌雄を分けるのは顔の部分に青さがちらりとでも見えるかどうかにかかっています。
 この個体は10p程度の若魚サイズで、背びれ尻びれのエッジも丸いままでしたが、ご覧のように青が随所に見られますので雄確定でした。
 購入して半年後にはこのように堂々たる雄ぶりを見せています。背びれ尻びれも伸長し、体型としては雄の成魚として完成です。
 この当時で13pほどでしたが、現在では、18pほどになりました。
Bディミディオクロミス・コンプレシケプスの場合
 これは購入直後の様子です。サイズは10pほどで、既にエッグスポットも出始めているので雄確定です。
 まだエッグが出ていない時期でも背びれのエッジに明確な赤いラインがあることや、吻部に青い発色があることなどで判断することもできます。
 購入から1年たった最近の様子です。エッグはさらに明確になり数も増えています。背びれの赤いラインの内側に白いラインも出てきています。この画像ではわかりにくいですが、背びれ・尻びれが大きく伸張しています。
 今後、水槽内で威張れるポジションを得ることができれば、完全発色に至るはずです。現在15pです。
Cティラノクロミス・ニグリヴェンテルの場合
 これは購入して1ヶ月ほどの画像です。背びれ・尻びれが丸くエッグスポットも出ていません。サイズは5pほどでした。
 吻部にわずかながら青い発色が見られたため雄と断定して購入しました。ティラノクロミス属のなかではニグリヴェンテルは発色が早いため、このような小さなサイズでも比較的容易に選別することができると思います。 

 ちなみに同居魚とのサイズの差を考慮してしばらくペットボトルをシェルター代わりにして飼っていました。これだと別に水槽を立ち上げる必要もなく、水質も一定になり、餌の量も確保できるので、見栄えは悪くても効果的だと思っています。
 サイズは13pほどになりました。エッグスポットもはっきりと出て背びれもとがり始め、雄確定です。
 頭部を中心に青い発色が見られますが、水槽内での地位が低いため、本来のぎらぎらブルーにはなお時間がかかりそうです。
 唇や鼻の穴近くの青は購入当初は時折うっすらと見えていたもので、今では常時このように青くなっています。
 5pサイズで我が家に来てから1年4ヶ月。15pになって頭部の発色が進んできました。背びれも伸張してきています。
 時折、同居のカエルレウスなどを追い回すときは独特の黒斑を完全に消し全身を青くするようにもなりました。ただし本来の濃紺の発色にはほど遠く、もう一段階の変化を待ちたいところです。
Dコパディクロミス・ボルレイ カダンゴレッドフィンの場合
 この画像は購入から1ヶ月近く経ってからのものです。まだひれが赤く体側は銀色のままですが、頭部が青っぽくなっているので雄確定。 この段階で背びれもとがり始めているので、これも雄であることを裏付けていました。
 購入から約半年で、ひれは青く体側は赤くなり、成魚の特徴を出し切りました。
 ご覧のように成魚になってもエッグスポットは明瞭に出ることはないので雌雄判別のポイントにはなりません。強いていえば、頭部の青と腹びれ・背びれ・尻びれが白く縁取られるのが見えるかどうかということになろうと思います。
 この画像で10p、現在では15pになりました。
 上の画像から1年3ヶ月経過し、絶好調です。
 サイズは変わっていませんが、腹びれが伸長し、弓形に伸びています。尻びれは基底部が黒ずんできて、エッグスポットと白いエッジが重なるように見えています。背びれの白いエッジもいくらか太くなっているようです。
 同居のアウロ♀に興味をもち、何度もハイブリッドを産ませているやんちゃな個体です。
Eカンプソクロミス・カエルレウスの場合
 カエルレウスは10pを超えても性差が見えてこないようなので、判別は難しいと感じています。
 この画像は購入後2ヶ月経過したところですが、エッグスポットも何も見あたりません。サイズは7pに満たない大きさです。
 ただ、下唇にわずかに青の発色が見られたため、雄と判断して購入しました。
 半年経って10pまで大きくなりました。下唇付近の青は相変わらずでほぼ常時見ることができます。
 この画像ではやや見にくくなっていますが、非常にうっすらとエッグスポットらしきものを見ることができます。もう少し成長しないと確定とまではいかないようです。
 上の画像から半年たって、サイズは15pに迫り、完全に雄の特徴を見せています。
 背びれは伸張を始め、顔だけでなく全身にうっすらと青をのぞかせています。周りの大型種に押されて控えめですが、体格で圧倒し始めたらもう一段階の発色を見せてくれることでしょう。
 5pサイズで購入して丸2年。20pを超えたところで急速に発色が進んで完全発色状態に至りました。今後の進展としては、水槽内の地位の向上に伴ってせびれしりびれが伸長しなおかつ赤く発色することが予測できます。
 体側に黄色いスポットが強く出るタイプもありますし、ほとんど目立たないタイプもあります。この個体はスポットが出る方だと思われます。
(2)経過観察中・・・
@ニンボクロミス・リビングストニーの場合
 ショップでの販売価格が980円と超お値打ちであったことからすると素性の怪しい可能性がなきにしもあらず、なのですが、ニンボ属は好きなのでお持ち帰りです。
 今回の雄らしさは次の3点です。
@えら蓋付近にうっすらと青
A腹びれ先端に青
B尻びれにエッグスポット
 いずれも決定的なものではないのでしばらく経過観察とします。
 現在の体長は5センチです。
Aプロトメラス・タエニオラータスの場合
 サイズは3p、まだ水合わせの段階でビニール袋越しの撮影です。
 ショップの水槽内で一番大きかったのと、かすかにエッグらしきものが1つ見えたことを頼りに決定しました。
 しかしこの写真のようにフラッシュ撮影してみると、エッグらしき模様は複数個確認できますし、体側には明らかに青い色が見えています。フラッシュによって特殊な反射をすることで通常光では見えなかったものが見えるようになったよい例になりました。
 ♂の成魚はあごから腹にかけて黄色くなるということですから今後はそちらにも注目していきたいと思います。