Amsterdam Club Report



PARADISO
Weteringsschans 6-8 Amsterdam.


4月某日アムステルダム。日本の春と比べると比較にならないくらい寒い。国立博物館の近くのスケートリンク場はいまだに氷が張っている。ライチェ広場に着いたのは午前1時。この季節でも分厚いジャンパーは手放せない。昼間は長袖のセーター一枚でも十分だが、真夜中ともなればまるで冷蔵庫の中にでもいるような気分になってくる。PARADISO前にはすでに長い行列ができている。並んで待つこと20分。大袈裟なセキュリティチェックを受けた後、服を預けに右奥のカウンターへ。エントランスを抜けると、まず最初に大きなロビー。左と右に幅の広い階段があり、2階のサブフロアに続いている。中二階ではカフェが営業していて、本格的なクロワッサンと紅茶が飲める。サブフロアを正面に更に右奥のドアを入ると、メインフロアを見下ろせる吹き抜けになっている。床とか手すりとかが木製で、なんとなく暖かみのあるレトロな雰囲気だ。古い木造建築独特の懐かしい匂いがする。なにしろ築200年以上も経つ教会を改装した由緒あるハコである。他のクラブと一味違った宗教的な息吹を感じるのもあたりまえか。ちなみに「PARADISO」とは天国といった意味らしい。

「WE LOVE 80’S」それが今夜のパーティのタイトルだ。だからという訳ではないだろうが、いつもより若干年齢層が高めだろうか。フロアはいい具合に人で溢れかえっている。どうやらさっきまでトムトムクラブのライブがあったらしい。ウーン、スケジュールをチェックするの忘れた。残念!ロンドンから帰ってきてから、何か生活のリズムがおかしい。軽い時差ボケかもしれない。不思議なことに東洋人の顔は一人も見かけず、おかげでいろいろな人から話し掛けられた。街にはけっこういるんだけど。オランダ人は気さくだというが、クラブにいる連中はとくにそう感じる。人見知りっていう単語自体が存在しないのではないかとさえ思う。(エクスタシーでキマッっているからだという説もあるが)「よっ、珍しいね。お前さん、日本人かい?おっ、この曲がサイコ−なんだよ。どーだい一服?」などと、昼間コーヒーショップで調達したジョイントをしきりに奨めてくれる。今日出会ったばかりの見知らぬ者同士が、その場で仲良く -y(^。^)。oO○ プハー ってなもんである。午前1時を回ったころから懐かしの曲のオンパレード。HEAVEN17/Penthouse and Pevemant、SOFTSELL/Tainted Love、DEPECHE MODE/Everything Counts、HUMAN LEAGUE/Don't Wont To Me、YAZOO/Only You -etc- 80年代の欧米ヒットチャートを賑わした珠玉の名曲が続く。まさしく第2期ブリティッシュインベイションの黄金期を支えたアーチスト達。お気に入りの曲がかかる度に嬉しそうに口ずさむ人もいる。ネイティブな発音で歌えるのが羨ましいと思ってしまった瞬間だ。ヨーロッパでも日本でも流行ったのは同じ曲だったんだなどと思うと、急にこの国の人達に親近感が湧いてくる。でも、考えてみると英国産のポップスばかり。オランダには母国語のフラマン語の歌謡曲がないのだろうか?ちょっと気になる疑問が湧いてきた。(ネーデルポップなるジャンルがあるらしいが、実際聴いたことはない。マイナーなジャンルらしい)ハイライトはEURYTHMICSのTHERE MUST BE AN ANGEL。80年代を代表するスタンダードナンバ−だ。アン・レノックスのソウルフルな歌声はいつ聴いても気持ちがいい。流麗なメロディラインにシンセを多用したモダンなアレンジは今のハウスの原型といえるかもしれない。クラウドの異様な盛り上がり方を見て、EURYTHMICSって欧州でもけっこう売れてたんだなぁと実感した。

午前4時を過ぎた頃から正統派ハードハウスにチェンジ。今までおとなくしていた根っからのハウス好きの若い衆がフロアに集まり始める。ただでさえガタイがでかいオランダ人。その踊りっぷり(暴れっ振り?)は見ているぶんには面白いが、回りにウジャウジャいると身の危険を感じるようになる。身長が1メートル90センチ以上ある肩肘の張った大男も珍しくない。オランダは知るひとぞ知る格闘技の盛んな国でもある。想像してみてほしい。小川直也やピーター・アーツのごとき巨漢が夢中で踊り狂っている光景を…。(怖っ)器械体操のように両手をクネクネ振り回しながらフロアの隅から隅まで走り回っている奴、髪の毛を振り乱し一心不乱にヘッドバッキングしてる奴、壊れたゼンマイ仕掛けの人形のようにピョンピョン飛び跳ねている奴。ドラック解禁だからというわけでもないだろうが、完全に向こう側の世界に行っている人多し。女の子も踊りが派手だ。へそ出し、胸の谷間強調といったファッションはブリト二ー・スピアーズの影響だろう。ゴムマリのような巨乳をブンブン揺らし、腰をクネらせながら挑発的に踊っているが、色気はまったく感じさせない。上背があるうえに下半身もボリューム感がありすぎ。羞恥心がないっつーか完全に体育会系のノリなのである。イタリアやフランスの女の子に比べると化粧っ気がないのも特徴。スッピンではないけれど、限りなくナチュラルに近いメイクだ。お洒落よりも踊り優先って感じで、そのあたりにもオランダ人気質っつーやつを感じる。DJも交代し、曲調はますますハードな方向へ傾いていく。完全な縦ノリのリズムで腰が引ける。これが噂のダッチトランスか!フト回りを見渡せば、最初に踊っていた客はほとんどいない。屈強なタンクトップ姿のお兄様達が目立つ。午前7時。アフターアワータイムに突入した。帰り支度をする客よりも、入ってくる客の方が多い。ホールは益々熱気を帯び、DJのテンションも高まる一方である。このぶんだとパーティが終わるのは昼過ぎになりそうだ。ちょっとついてけんわ、ワシ。これ以上体力が続かん・…。

他にもいろいろクラブをはしごしたけど、毎回最後に辿りつくのは、必ずっていっていいほどPARADISO。−というわけで、ほとんどホームグラウンドといってもいいくらい多く通ってしまった。以来、私にとってオランダといえば、チューリップ畑でも風車でもなく、このハコでの様々な出来事を思い出すのである。


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